Biomaterials Lab., Kansai University

関西大学 生体材料学研究室

研究背景Research Background

生体に倣うマテリアルデザイン

医療技術の発展にマテリアル科学が重要な役割を果たしてきたことは言うまでもありません.柔軟かつ耐久性の高いカテーテル,形状記憶特性を活かした自己拡張性ステント,複雑な形態の骨欠損の修復を可能にする自己硬化性骨ペースト,酸素透過性に優れたコンタクトレンズ,自己会合性を利用した薬物輸送用ナノ粒子,組織再生用細胞シートを調製するための温度応答性培養皿など,医療分野で必要とされるマテリアルの形態は様々です.生体と接触して用いられる医療用マテリアルには,個々の用途に適したバルク特性を備えていることはもちろんのこと,生体と安定な界面を形成することも要求されます.なぜなら,人工的に作られたマテリアルは,もともと生体に存在していない構造を持つため,生体はいち早くこれを認識し,排除しようとします.この反応は生体にとってごく自然なものであるが,人工のマテリアルを用いた治療では障壁となります.

生体材料学研究室では生体とマテリアルとの界面の設計に焦点をおき,生体から異物として認識されないポリマー材料の開発を行なっています。具体的には細胞膜の構造を模倣した双性イオン型ポリマー(MPCポリマー)や核酸の構造に倣った生分解性ポリマー(ポリリン酸エステル)を主軸とし、これらの分子設計から精密合成、さらに、メディカルデバイス、組織工学、DDSなどへの応用研究も展開しています.

Literature s for Surface modification with MPC polymers

Coating
Ishihara K et al., J Biomed Mater Res 1990, 24, 1069.
Adsorption
Ito T et al., Sci Tech Adv Mater 2003, 99.
Ito T et al., Colloids and Surfaces B 2005, 175, 77.
Grafting
Iwasaki Y et al., J Biomater Sci., Polym Edn 1998, 9, 801.
Ishihara K et al., Colloids and Surfaces B 2000, 18, 325.
Iwasaki Y et al., J Biomed Mater Res 2001, 57, 72.
Feng W et al., J Polym Sci Part A: Polym Chem 2004, 42, 2931.
Iwata R et al., Biomacromolecules 2004, 5, 2308.
Feng W et al., Biomaterials 2006, 27, 847.
Blending
Ishihara K et al., J Biomed Mater Res 1996, 32, 401.
Ishihara K et al., Biomaterials 1999, 20, 1545.
Ogawa R et al., J Biomed Mater Res 2002, 62, 214.
Iwasaki Y et al., Biomaterials 2002, 23, 3697.
IPN
Iwasaki Y et al., J Biomed Mater Res 2001, 57, 72.
Morimoto Y et al., Biomaterials 2002, 23, 4881.
Iwasaki Y et al., J Biomed Mater Res 2003, 41, 68.
Morimoto Y et al., Biomaterials 2004, 25, 5353.

MPCポリマー

MPC のホスホリルコリン基は中性であり,高含水特性を示すにもかかわらず水の構造に影響を与えません.これらの特徴により,MPCポリマーはタンパク質と相互作用せず,非特異的なタンパク質吸着を抑制します.また,細胞に与える影響も小さくMPCポリマーを内面被覆したポリマーバック内で血小板を活性化を惹起することなく保存できることが明らかになっています.現在までに様々な医用ポリマーの表面修飾が実施され,特に,抗血栓性に優れた循環器系メディカルデバイスの実用化が進められています.

MPCポリマーによる表面改質

MPCは生体膜の構造に着目して分子設計された極めてユニークなメタクリル酸エステルであり,多様な分子設計と表面修飾を通じ、生体適合性に優れた様々なポリマーマテリアルを提供します.

ポリリン酸エステル

MPC ポリマーを含むリン脂質ポリマーの研究を遂行してきた我々は,これまでに様々なリン脂質モノマーを合成してきました.MPCは環状リン酸化合物とトリメチルアミン(TMA)の反応により得られます.この環状リン酸化合物に注目し、新たなポリマーバイオマテリアルの合成に着手しています.

リン酸エステル結合は核酸やタイコ酸など生体高分子に存在し,この結合を主鎖にもつポリリン酸エステルは非酵素的な加水分解および酵素的に分解されます.これらのポリマーは、環状リン酸化合物の開環重合(右図)や塩化リン化合物の重縮合により合成できます.最近では,リパーゼを用いた酵素重合でもポリホスホエステルが得られることが明らかにされています.ポリホスホエステルは溶解性や分解性が典型的な脂肪族ポリエステルに比べ優れており,化学修飾も容易なため新たな生分解性ポリマーとしてとても興味深いポリマーです.


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